映画『10クローバーフィールド・レーン』ネタバレ感想と評価!

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フィルミナ(@filminaty666)です。

一言で感想を述べると

「なんだこの闇鍋!

具材のコンセプトばらばらやん!

でもフシギと美味しいな!」

です。作り手に翻弄される感覚が楽しかったんでレビューします!

予告編

『10クローバーフィールド・レーン』(2016)

監督:ダン・トラクテンバーグ

キャスト:メアリ・エリザベス・ウィンステッド/ジョン・グッドマン/ジョン・ギャラガー・Jr

あらすじ

交通事故に遭い、気を失ったミシェル。

目を覚ますとそこは殺風景な見知らぬ部屋。

おまけに鎖で足を繋がれているじゃないの。

「何者かに拉致・監禁された・・・!」

パニックに陥る彼女の前に怪しい男ハワード(ジョングッドマン)が現れ話しかけます。

「ここは俺の避難用シェルターだ。

外の世界は宇宙人か何かの攻撃を受けて、もう人が住める環境じゃない。

毒ガスで大気が汚染されちまったんだ。

シェルターへの帰り道、お前が事故で気絶してるのを見つけたから連れて来てやった。

俺は命の恩人だぞ。感謝しな。

だから、いいか?

絶対に外には出るなよ??

ハワードは善人なのか、悪人なのか・・・?

毒ガスで大気汚染・・・?ウソでしょ・・・?

疑心暗鬼のミシェル、ハワード、そしてもう一人の住人エメット。

男女3人の愉快な共同生活が始まった。

「どこが愉快やねん!」

前作『クローバーフィールド』のおさらい

突然NYを襲った不気味な怪獣による大パニック。

その様子を主観カメラで撮影したファウンドフッテージ映画が『クローバーフィールド』でした。

9・11テロ以降のアメリカ社会を覆った

「大災害は前触れもなく私たちの生活を破壊する」

という不安感をうまく表現しており、POVパニック映画ならではの途切れない緊張感が見事な作品です。

(↑怪獣に吹っ飛ばされた自由の女神の首

アメリカの象徴を破壊する冒頭に、当時のニューヨーカー達は声を失った)

今作『10クローバーフィールド・レーン』はその続編(?)にあたるんですが、舞台となる世界が同じというだけで、直接ストーリー上の関連はございません!

終盤の展開が

「これもしや前作と関係ある?」

と推測させる程度。

”チラ見せ”による謎めいた雰囲気づくりに、ファン化を促進する心理学が凝らされていますね。

「ツァイガルニク効果」とか言いますけども。

それでは続編『10クロ』のレビューに移りましょう!↓

ネタバレ感想と評価

(※観た後で読んでね!)

ムダのない導入

彼氏と別れる事を決めた女の子ミシェルが、大急ぎで荷物をまとめて家出の準備。

必要最低限の描写をパパッと済ませて場面が切り替わります。

「この先が重要だからササっと話を進めちゃうね!」

って割り切り、良い良い。

しかし。

よく見るとしっかり終盤のキーアイテムが映り込んでるので油断できません↓

ウイスキーの瓶!

「GLENVAGULIN」って銘柄名が今作の初笑いシーンです。

スコッチウイスキーの名前は「GLEN(渓谷)」が頭によく付きますが、それに実在の銘柄「LAGAVULIN」をもじって合わせたネタかと思われます。

行く当てがあるのかないのか、車をビューンと走らせる家出娘ミシェル。

途中で立ち寄ったガソリンスタンドが不穏でいい味出してますね。

「ホラー映画の冒頭にガソリンスタンド」『悪魔のいけにえ』以来のお約束。

真っ暗な中にボンヤリ浮かび上がる建物というのが、その後の「世界で唯一、災害から逃げおおせた場所」という舞台転換を暗示しているようにも見えます。

このルック、ラルフ・ピーターズ(Ralf Peters)の写真に似てて琴線に触れました。

夜のガソリンスタンドをよく撮ってるカメラマンです↓

その後ミシェルは追突事故を起こされ

ガシャーン!!

道路わきに車ごと投げ出されてしまいました。

『セッション』の某シーンを思わせるド派手なクラッシュですが、実際『10クロ』はデミアン・チャゼルが脚本で参加しています。

そして浮かび上がる

「10 CLOVERFIELD LANE」

の文字。

これがカッコイイんだ!

字体と線の変化がソール・バスふうで、一気に心を掴まれちゃいました!

そしてこの事故で気を失ったミシェルは、「見知らぬ天井」の下で目を覚まします。

字の配置も似てません?↓

(『新世紀エヴァンゲリオン』の第弐話タイトル)

『SAW』からホームドラマへ??

ミシェルが足を鎖で繋がれ目を覚ました部屋。

タイルの床とコンクリだけの殺風景な内装が不気味です。

「なんだなんだ『SAW』みたいな血で血を洗う惨事の始まりか!?」

と思いきや、太っちょの怪しいおじさんハワード(ジョン・グッドマン)出現。

ミシェルが疑り深くなっていただけで、ハワードは素直に鍵を外してくれました。

そして気弱な青年エメットと共に、3人でシェルター暮らしを開始。

ここからが面白い。

監禁・密室・会話劇

60年代ポップスの流れる、こじゃれた内装の部屋に案内されたエメットとミシェル。

居丈高な態度のハワードに怯えつつも、ミシェルは徐々に2人と人間関係を構築します。

一緒にボードゲームをやったり↓

リビングでくつろいだり↓

力を合わせてジグソーパズルを作ったり↓

一緒に料理を作ったり↓

バックには陽気なアメリカンポップス。

「おいおい『フルハウス』か?」

と言いたくなるほどのホームコメディ色。

仲良し演出が重なるほどに、こちらは

「逆に気持ち悪いぞ…この親しげなムードは本物か…?」

と、ざわざわとした疑心暗鬼に沈む仕掛けです。

※ちなみに『フルハウス』の子供もミシェル↓

「名作やで!見てな!」

緊張と緩和はサスペンスの軸ですが、ことほどさように今作は「緩和する方法」が独特。

「善人か悪人か分かんないけど、とりあえず談笑はできるね…」

「とはいえ何か得体が知れないし、心は許せないなぁ…」

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まるでM・ナイト・シャマラン監督『ヴィジット』のような居心地悪さ!(ほめ言葉)

よりドキドキするために「視聴者と主人公が同じ情報量しか与えられない」のがサスペンスの基本ファクターだと思いますが、それを改めて認識させてくれます。

手作り大脱出!

「このおじさん変態じゃないのかも・・」

と思った矢先。ハワードは過去に少女を誘拐&殺害していた、正真正銘のガイキチおじさんである事がふとした出来事で判明。

「やっぱり変態だったんだ・・・」

エメットとミシェルはハワードに見つからないよう注意しながら、脱出作戦の実現に向けてコッソリと計画を実行し始します。

「脱出したあと汚染された空気で病気にならないよう、防護マスクと防護服を作ろう!」

”服飾デザイナー志望”というミシェルの設定がここで活きてくる。

シャワールームのビニルカーテン、ハサミ、ペットボトル、ダクトテープ、、

ハワードに計画がバレないように、一つずつアイテムを集める2人。

ハラハラさせるゲーム感覚には『エンジェルウォーズ』を思い出します。

知恵をめぐらし、

ありあわせの物(=制約)で、

逃げる準備を進める」

これぞ脱出モノ映画の醍醐味!

『大脱出』『ショーシャンクの空に』『穴』『キャストアウェイ』『ミザリー』

脱出モノ映画は数多ありますが、「知恵+制約」のコンボで目的を達成させる展開を見ると、自分の脳みそが喜んでるのが分かります。

ピタゴラスイッチ的「なるほどスゲー!」感。

DIYでアイデア工作にいそしむ一連の描写ですが、とりわけミシェル・ゴンドリー映画を思い出しました(こちらも”ミシェル”繋がり)

ドラクエだったら「リレミト!」って唱えればすぐ出られるんだけどね!

タランティーノ的な心理ゲーム

「騙してるのは自分か相手か…」

相手はすでに私の秘密に気付いてる…?」

心理的なかけ引きが繰り広げられ、心臓に悪い!

針のムシロに座らされてる気分がたまりません。

特に”連想ゲーム”のくだりは秀逸。

先ほど挙げた『ヴィジット』でも、子供たちがヒヤヒヤしながら奇怪な老人とボードゲームに取り組むという、腫れ物に触るような団らんシーンがありました。

これらは『レザボアドッグス』『イングロリアス・バスターズ』『ヘイトフルエイト』など、タランティーノ監督がよく用いる手法でもあります。

ミシェル役のメアリ・エリザベス・ウィンステッドはタランティーノ監督の『デス・プルーフ』にも出てますしね↓

いきなりゾンビ!?

しかし。

ミシェルとエメットの脱出計画はやっぱりハワードにバレていた!

エメットは脳天に拳銃の一撃を受け絶命。

あまつさえ死体処理として「毒液どろどろ何でも溶かす」の刑を執行される残虐っぷり。

和気あいあいとしたコメディ描写があるだけに、落差が激しくショックが大きい。

「溶かされる」って「食べられる」と同じくらい想像を絶する事態じゃありませんか?

こんな殺され方、ふだん想像しませんからね。

だから余計に怖い。

遺体でなく完全にモノとして”処理”するのも狂気を際立たせます。

『ブレイキングバッド』のホワイト先生やドラマ『怪物』向井理くんによる人間どろどろ溶かし描写もエグかったなあ。

「ヒゲも剃ってツルツルや。

ますます不気味になったやろ」

そしてミシェルは一瞬のスキをつき、ハワードをどろどろ液体で攻撃!

『ロボコップ』で体と顔を溶かされた敵よろしく、ゾンビのように迫りくるハワード。

すごいなこの映画なんでもアリだな!

と思いきや更なる超展開が待ち受けていました。

エイリアンとの戦い!

「防護服、頑張って作ったで!

コスプレする人もおるんやで!」

↓ ↓ ↓

無事にシェルターから脱出して終わりかと思いきや、まさかの宇宙人襲来!

ハワードは自分が変態で少女誘拐犯である事を隠してましたが、「そっちはホントだったのかよ!」

息つく暇もないままクリーチャーとの直接対決!

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に迫る勢いの「どうしてこうなった」感。

でもこの荒唐無稽さ嫌いじゃない。

ここで「もしや」が確信に変わりましたが『10クローバーフィールド・レーン』はシリアスの皮を被ったギャグ映画です。

「以前、父親の虐待を受ける少女を目撃したんだけど、

救えなかったの…私は逃げた…弱い女…」

見知らぬかわいそうな少女に自分を重ね合わせ、心の傷を吐露していたミシェル。

そんな彼女がシェルターでの経験を通してイッキに最強の女に変貌を遂げる!

まるで『エイリアン』のリプリーじゃないですか。

ミシェルは激闘の末にクリーチャーを殲滅し、逃亡に成功。

さらにカーラジオから人間の声が!

『私たちは宇宙人と戦っています…!

私たちは優勢です…!

戦える方、医療経験のある方はヒューストンに集まって…!』

折よく道路標識には「ヒューストンはこっち」の文字。

雷鳴に浮かび上がる宇宙船に睨まれながら、戦火の上がる遠い街へと車を急がせるリプリー。

そこで作品は幕を閉じます。

「閉鎖的な環境を抜け出し、自由で豊かな暮らしが始まるかと思いきや、待っていたのは更なる試練の連続だった…」

「大人になるってこういうこっちゃ」という題目が最後にぶち込まれました。

閉塞的な空間を「お母さんの子宮」に見立て、そこから抜け出す事で成長を表現するという、物語の型に沿ったものでしょう。

『THX-1138』『CUBE』を思わせる余韻があります。

また「自分が見慣れた昨日までの日常はもう戻ってこないんだ…」という悲壮感と絶望感は『ミスト』などとも共通するテイストです。

ハワードはミシェルの心?

ジョン・グッドマンは『バートン・フィンク』で主人公の心の一側面、オルター・エゴを演じていました。

今作のハワードも、ミシェルの心の中にいる

「自分の成長を阻む強権的な父親像」

を象徴したおじさんなのかも知れません。

おわりに

監禁、脱出、密室会話劇、ゾンビ、悪の宇宙人、

いろんな要素をぶっこんだ闇鍋を、

ムダのない脚本のだし汁でまとめ上げた良作かと存じます!

オススメ!

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