映画『永遠のこどもたち』(2007) 感想と評価

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おとぎ話はいつも哀しい。

予告編

映画データ

『永遠のこどもたち』

(題:El Orfanato)

2007年/スペイン・メキシコ/108分
監督:J・A・バヨナ
製作総指揮
:ギレルモ・デルトロ
脚本
:セルヒオ・G・サンチェス
撮影/音楽:フェルナンド・ベラスケス
出演:ベレン・ルエダ/フェルナンド・カヨ/ジェラルディン・チャップリン

あらすじ

海辺の孤児院で育ったラウラは大人になり、閉鎖され廃墟となっていたその孤児院を買い取った。

障害を持つ子供たちの施設として孤児院を再スタートさせるためだ。

ラウラは準備のためにそこへ移り住み、夫と養子のシモンと新しい暮らしを始める。

しかし。

養子シモンは友だちのいない寂しさからか、想像で作り上げた友達(イマジナリーフレンド)と毎日遊ぶようになってしまう。

ラウラは心配するが、シモンは一向にやめようとしない。

そして。

入園希望者を集めたパーティー当日、会場に覆面をかぶった奇妙な子供が現れる。

ラウラに何かを伝えたいようだが、覆面を剥がされかけると、何も言わずに海辺の洞窟の中へ逃げてしまった。

謎の子供が騒動を起こした一方、シモンは姿をこつ然と消していた。。。

感想と評価

ギレルモ・デルトロ製作総指揮のオカルトホラー。

監督は『ジュラシック・ワールド2』の監督に抜擢されたギレルモの後輩、JAバヨナ。農協のような名前が特徴だ。

ダークファンタジーの要素、また『パンズラビリンス』のような哀しすぎる幸福感にギレルモの影響が感じられる。

原題”El Orfanato”は英語で”orphanage”。「孤児院」という意味。

ダークな映像美

不穏な室内シーン

ブルー主体の色調や、強烈な照明によりまっくろな陰ができる人物の表情など、特に映像の美しさに惹かれた。

中でも画作りの魅力がいかんなく発揮されるのが、引きの視点で撮られる室内シーンだ。

たとえば終盤の地下室シーン。

ジョエル=ピーター・ウィトキンの写真や、フローリア・シジスモンディのMVのようなゴシック全開プロダクトデザインが素晴らしい。

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死後に部屋からたくさんのイラスト群が発見される設定、これはアウトサイダーアートのヘンリー・ダーガーを思わせる。

主人公が夢の中でまっくらな水中を泳ぐシーンも印象的だ。
これにはトニ・フリッセルの水中写真を思い出す人も多いだろう。

50年代の末に撮られたこの写真は、のちにBill Evans 『Undercurrent』(1962)のジャケットにも使われたことで有名だ。

最近ではSuedeのアルバムジャケットでも引用されている。

JAバヨナ監督はもともと農協の職員、ではなくMV出身の映像作家らしい。

インパクトのある一枚絵としてシーンを作るセンスはそこから活きてくるのだと思う。

そして直前のカットがアップであるぶん、引き視点による広がり、孤独感がさらに強まる。
個人的に編集のヒット&アウェイと呼んでいる。

だるまさんが転んだ

「だるまさんが転んだ」のメキシコバージョンを2分間のロングショットで追うシーンも、シンプルな構図ながら見せる。

「 1,2,3 Toca la pared!」

唱え、振り向く、という動きをラウラは数回繰り返す。

その際カメラが一緒に振り向くスピードと、ラウラの緊張感の度合いがぴったりとリンクしているため、観ながらとても引き込まれた。

タイトルデザイン

冒頭の映像演出も見どころの一つ。

画面の枠外から伸びた手がアラベスクの壁紙をビリビリはがし、そこにスタッフ/キャストの名前が現れる。

これはソール・バスが手がけた『バニー・レークは行方不明』タイトルバックのパスティーシュだろう。

「行方不明の子供を探し続ける」という物語が始まることを暗示する、気の利いた演出だ。

夫から預かったお守り

ラウラが夫から託されたネックレスは、聖アントニウスがかたどられたお守りだ。

恵まれない者たちのために私財を投じ、人目に付かない場所で瞑想の日々を送った聖人は、修道院制度の祖ともいわれる。

人里はなれた場所で、障害を抱えた子たちの為に尽くそうとするラウラもまた聖アントニウスの意志を継いだ聖人だ。

子どもを抱きかかえ、聖母子像を思わせる姿を取るラストの構図にもそれが表れている。

最後に

ジョージ・C・スコットの『チェンジリング』にも似た不気味さと、『サラの鍵』の衝撃展開と同じ結末がほんとに切ない。。

ハデさはないが、静かで切ない気分を味わうには良い映画だ。

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