映画『ムーン・ウォーカーズ』(2016) 感想と評価

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1960年代のイギリスを舞台にしたサイケ暴力アクションコメディ『ムーン・ウォーカーズ』が良かった話!

映画データ

『ムーン・ウォーカーズ』

(原題:Moon Walkers)

2016年/フランス・ベルギー/94分
監督:アントワーヌ・バルドー=ジャケ
製作:ジョルジュ・ベルマン、ディーン・クレイグ
脚本:ディーン・クレイグ
音楽:アレックス・ゴファー、キャスパー・ワインディング
撮影:グリン・スピーカート
出演:ロン・パールマン、ルパート・グリント他

あらすじ

CIAのキッドマン(ロン・パールマン)はベトナム戦争帰り。

戦地での過酷な体験でPTSDになり、アメリカに帰国してからも日常的に幻覚を見るようになっていた。

そんなキッドマンに、CIA本部から極秘任務の指令がくだる。

これまで多大な時間を宇宙開発に費やすも失敗続きだったNASAは、
「今度アポロ11号の月面着陸を成功させなければ、ソ連に先を越される」
と焦っていた。

そこで下った指令が
「失敗した場合の保険として『2001年宇宙の旅』(1968)を監督したスタンリー・キューブリックにニセ映像の作成を依頼し、秘密保持のために映像制作に関わった者たちは消せ」
というもの。

キッドマンは大金を手に飛行機に乗りこみ、キューブリックが住むロンドンへと向かった。

その頃ロンドンでは、売れないバンドのマネージャーで借金まみれのジョニー(ルパート・グリント)が、資金繰りと借金返済に四苦八苦していた。

バンドからはクビ宣告をされ、自宅も借金取りに荒らされる始末。

そこでジョニーはエージェントとして成功を収めている従兄弟のデレクに助けを求めに行く。しかし彼からは何の救いも得られず、諦めかけたそのとき、偶然にも大金を手にしたキッドマンと出会う。

ひょんなことからジョニーをエージェントの代表だと思い込んだキッドマンは、ジョニーにキューブリック監督との打ち合わせを依頼。

金に困っているジョニーはキッドマンを騙し、まんまと大金を手に入れた。

しかし、情報はすぐ借金取りたちに伝わり、今度はその大金を借金取りのギャングたちが持ち去ってしまう。

しかもジョニーは金を失って初めて、その大金の出所がアメリカのCIAだと知り恐怖に震える。「これは本当にやばいことになったぞ!」

一方ホテルに戻ったキッドマンは、たまたまテレビで本当のスタンリー・キューブリックの姿を目にし、ジョニーたちに騙されたことを知る。怒りに燃えたキッドマンはジョニーとレオンを探し出し、金の返済を求めるも、ギャングの手に渡ったことを知る。

月面着陸まであと1週間。

それまでに映像をアメリカに送らないと手遅れどころか、自分たちの命も危ない。しかし時間がない!そこで3人は自分たちで映像をなんとかするという無謀なプランを立て、ジョニーの知り合いの映画監督レナータスに映画製作の依頼に出かける。

ところが彼のアトリエはドラッグが氾濫したヒッピーのたまり場。

おまけにレナータスのクリエイティブなビジョンもメチャクチャで、とても高度な映像ができるような環境ではない。

しかし、後がないキッドマンたちはレナータスをなんとか説得し、資金さえあればすぐに映像製作に着手するところまでこぎつける。といっても手もとに金はない……。

というわけで、キッドマンとジョニーはギャングの本部に乗り込み、派手な銃撃戦を繰り広げて金を奪還。ヒッピーたちもスタッフとして参加させ、とんでもないリスクを抱えながらもなんとか映像製作をスタートする。

その裏でアメリカ側はどうもキッドマンの様子がおかしいと感じていた。

そこで工作員を現場に送り込み、映像が完成した後、製作に関わった者たちを消そうと密かに動き出す。

同じころ、多くの仲間の命と金を奪われたギャングたちもキッドマンたちへの報復を誓い、現場へと乗りこむ準備を整えていた。

はたしてキッドマンたちは無事映像を完成させられるのか?
いや、彼らの命はどうなるのか?
それよりも月面着陸は成功するのか?

世紀の瞬間を前に、男たちの死闘が始まろうとしていた―。

(公式サイトより)

映画の感想と評価

マジでやばいよどうしよう!?

「マズイ状況に追い込まれたおバカ達が、策を講じるうちにどんどん事を大きくしてしまう」

というドタバタコメディで、ガイ・リッチーの『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』やミシェル・ゴンドリー『僕らのミライへ逆回転』を思わせます。

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コメディではないけど、CIAの指示でニセ映画づくりと言えば『アルゴ』も同じですね。

『僕らのミライへ逆回転』に関しては

「苦肉の策でキャラたちが自作映画を作る」
「ラストシーンでみんなが一つのテレビを観て感慨にふける」
「コメディにスタイリッシュな雰囲気を添えるUKロック」

という点まで同じですが、それもそのはず。

ある人物が両作品の製作にかかわっているのです。

めくるめくサイケワールド

今作のプロデューサーであるジョルジュ・ベルマンは、映像プロダクション”パルチザン”の創業者。

所属ディレクターたちは斬新なアイディアと映像アプローチで、主にミュージシャンのMVや起業CMなどの映像を手掛けています。

「よく思いつくなあ」と感嘆してしまう発想の作品ばかりで、どれも終わるまでまったく目が離せません。

CM/MVがメインなので1分未満~数分間と短い映像ばかりなのも嬉しい。

このパルチザンを代表するディレクターが、有名なミシェル・ゴンドリーです。

彼が監督した長編映画『僕らのミライへ逆回転』『エターナル・サンシャイン』『恋愛睡眠のすすめ』『グッバイ・サマー』といった作品もまたジョルジュ・ベルマン製がプロデューサーとして参加しています。

そして今作『ムーン・ウォーカーズ』で長編映画デビューを果たしたアントワーヌ・バルドー=ジャケ監督もまた、パルチザンの所属ディレクターというわけです。

90年代の半ばにバルドー=ジャケ監督は日本ではなじみが薄い人物ですが、プジョーやホンダ、ニッサンなど沢山の企業CMを数多く手がけており、そのどれもが奇想天外なアイディアがギラギラ光る名作ばかり!

また、今作で音楽を担当したアレックス・ゴファー “The Child”のおもしろMVも彼による作品。キッチュでカラフルな映像美が人気の『アメリ』でも使用されて注目を浴びた曲でもあります。

CMはブランドや特定の商品について、

「数十秒という短い尺でいかに顧客に印象づけるか」

「繰り返し見たいと思えるか」

がキモとなるので、CM/MV出身の映画監督は視覚的な面白さを演出するのに長けた人が多いですね。

今作では、ロン・パールマン扮するCIA諜報員がラリラリになるシーンにおいて、監督が得意とするCM/MV的演出が冴えわたります。

『ラスベガスをやっつけろ!』『トレイン・スポッティング』『イージー・ライダー』などの映像を、60年代UKのサイケ感覚で仕上げたイメージ!

プロダクションデザインや衣装も、60年代の空気に独自の造形感覚、色彩感覚をミックスさせており視覚的に楽しすぎる。

ミシェル・ゴンドリーやスパイク・ジョーンズのMV・映画が好きな方はツボること間違いなしなので、パルチザンの公式youtubeチャンネルなどで是非チェックしてみて下さい! 

過激な暴力とガンアクション

「それぞれの勢力同士が、おかしな巡りあわせから徹底的にドンパチ潰し合う」

という構図。

ショットガンで一瞬にして頭がふっ飛んだり、スローモーションでギャングとCIAがバタバタ倒れていく突き抜けたバイオレンス描写。

それらをスタイリッシュに構築した映像美。

と、これまたガイ・リッチー好きのツボにどストライクなポイントばかり!

パールマンによる激しい攻撃シーンに『時計仕掛けのオレンジ』の曲を入れるキューブリックオマージュもイカす。後半には『2001年宇宙の旅』も流れます。

しかし、監督の映画が今のところこれ一本しかないのがツライです。

『ロックストック~』サイコー、次は『スナッチ』観よ、あとで『リボルバー』も観よ」

とはいかないのが、もどかしいったらない!

最後に

「監督!!!もっと映画を作ってくれ!!!!!!」

とにかくそれに尽きます。

今作は各シーンごとにでみれば観れば申し分ないのですが、映画という長尺の、つまり枠組みにおける映像やストーリー構築には手探り感が否めません。

これはミシェル・ゴンドリーの『ムード・インディゴ』に覚えた感覚と同じ。

これはCM出身監督の初長編という事もあり、仕方ない部分もあるでしょう。

今後どんどん映画的イディオムを洗練させて、メインストリームに躍り出ないかな~と激しく期待しています。

アントワーヌ・バルドー=ジャケ。名前が長くて覚えにくいけど超オススメ!

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