映画『完全犯罪クラブ』(2002) 感想と評価

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『ファニーゲーム』のような純粋悪でもなければ、『エレファント』のようにドス黒い敵意を抱えているわけでもない。

二人組の凶悪犯はその辺にいるフツーの高校生だった。

今回は『完全犯罪クラブ』の話です。

映画データ

『完全犯罪クラブ』

(原題:Murder by Numbers)

2002年/アメリカ/120分
監督:バーベット・シュローダー
脚本:トニー・ゲイトン
撮影:ルチアーノ・トヴォリ
編集:リー・パーシー
音楽:クリント・マンセル
出演:サンドラ・ブロック/ライアン・ゴズリング/マイケル・ピット

あらすじ

カリフォルニアの港町。
共にリッチな家庭に育ち、頭も良いリチャード(ライアン・ゴズリング)とジャスティン(マイケル・ピット)。彼らは高校のクラスメイト同士だ。

彼らは何の苦労も知らず満足に生きていたはずだったが、

「自分たちの優秀さを証明したい」

そのためだけに完全犯罪を計画。見ず知らずの女性を倒す。

事件を担当するキャシーは勝ち気な性格の女刑事。
一見タフな彼女だが、過去のある出来事で心に傷を負っている。

追う者と追われる者。
事件の中でそれぞれの心はどう移り変わっていくのか。

作品の背景

1924年に実際に起こった、レオポルドとローブという裕福なユダヤ人男性2人組による事件がベースになっています。

頭脳明晰であった彼らはニーチェの超人思想に感化され、
「自分達の優秀さを確認したい」
という目的で、無差別に選んだターゲットに対する、完全犯罪をもくろみます。

動機が動機のため、ターゲットに何の恨みがあるわけでもなかった。そして実行。

雑な手口であった為すぐに捕まりましたが、常人には理解できないその動機に社会は戦慄しました。

その後のナチ党と根底でつながる愚行を、他でもないユダヤ人が起こしていた。なんとも後味の悪い事件です。

映画のテーマ

二人の少年が「なぜ(how done it?)」「どうやって(why done it?)」その事件を起こしたかをめぐり、トラウマを抱えた女刑事が謎に迫ります。

何しろ犯人が分かっていますので、今作では事件そのものよりも以下の点を掘り下げる作りとなっています。

①友情

体裁としては犯罪捜査映画なのですが、実質的には

・女刑事キャシーと相棒サム
・リチャードとジャスティン

2組の友情が事件を通してどう変化していくのかを、対比的に描いたヒューマンドラマです。

手軽かつ大味に報酬系を刺激してくれるブロックバスターなどに比べれば、
ハデなクライマックスもなく、一見うす味に見える今作はかなりジミな印象を受けます。

しかし人物描写の点では、有機的で密度が濃く、けっして悪くないです。

キャシーとサムの関係性

女性であるキャシーがダンディに誘惑し、弱気な男性が篭絡される、というのが二人の関係のスタート地点。

監督の言葉を借りれば、
「ボギーとバコールの立場が逆転している状況」
です。

それが時間を追うに従って、だんだんキャシーの孤独感、過去のトラウマに向き合えない芯の弱さが露わになっていきます。

いっぽう最初は頼りなく見えたサムですが、もとより優しく頭もキレる男。
キャシーの内面にくすぶる闇に気付いて、寸鉄ひとを刺す言葉をピシャリと突き付けます。

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「君は強がって見せてるけど、本当は向き合うべき現実を無視する弱い人だよ」

図星を突かれて言葉を失うキャシーですが、今まで自分にここまで言ってくれる人はいませんでした。

いちど同衾したとは言え、彼らの間には結局ロマンスは生まれません。
その代わり男女の仲を超えた友情によって、キャシーはトラウマを乗り越えます。

派手なアクションやクライマックスに頼らなくとも、深みのあるバディムービーは成立させられるのです。

リチャードとジャスティンの関係性

学校の人気者でイケメンのリチャードと根暗な優等生ジャスティン。
彼らの関係は複雑に浮沈を繰り返しながら進展していきます。

はじめはリチャード優位の構図に見えますが、クラスメイトの女の子リサの登場により一気に形勢が逆転。

モテモテで女の子には事欠かないリチャードが、リサに恋したジャスティンを見て激しい動揺を見せるのです。

史実においてもレオポルドとローブは同性カップルだったと言われますが、今作における二人の関係もそれをなぞった作りになっています。

友情、共犯関係、裏切り、愛憎。

たった二人の社会にこれだけたくさんの関係性が生じ、
それだけ感情も多面的に醸成される。

特に取り調べ室におけるゴズリングの表情の変化は、目を見張る演技です。

この少年たちを安直な記号に落とし込みすぎてはならない
首尾一貫した思考・行動をするキャラクターではなく、曖昧に揺れ動くリアルな存在として彼らを描いた製作陣を高く評価したいです。

カップル単位での関係性

はじめは完全犯罪の成功を確信し自信満々にふるまう少年たちと、翻弄される刑事たち、という構図。

それがだんだん、追い詰める刑事たちと、絶望の淵に立たされる少年たちという構図に移っていきます。

つまり

①サムとキャシーの関係
②リチャードとジャスティンの関係

というバディ内部の関係が入れ替わるのと並行して

③バディ単位での関係性

これもまた逆転していくのです。

人間関係を立体的に捉える脚本の巧みさに、2回目を観てから気づいてうなりました。

②悪の形

「登場人物はハッキリした動機のもと、一貫性のある行動を取るべきである」

そのルールから逸脱した少年たちの人物設定は、初見時は退屈に思えました。

しかし、実社会においてそういう人物はむしろマレなもの。

むしろ本当に怖いのは、多くの人と同じく感情を持ち恋もする、いたって普通の少年が思いつきでこんな事件を起こしたこと。

『クリーピー』『ヒメアノ~ル』などのヒールとは、「大義がない」という部分においてベン図で重なります。

同事件を題材にした作品

特異な動機の事件のため、『完全犯罪クラブ』以前にも何度か映画化されています。

・リチャード・フライシャー監督『Compulsion』
・アルフレッド・
ヒッチコック監督『ロープ』
・トム・ケイリン『恍惚』

最後に

一度観ただけだと「なんだかうす味で不完全燃焼だな~」で済ませてた可能性大。

2度目からジワジワ味が出てくるタイプの映画です。

ゴズリングのスティーブ・マックイーンへの愛がズバズバ伝わる服装とフォード・マスタングもシビれポイント!

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