映画『ミュージアム』ネタバレ感想!和製『セブン』はココがすごい

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フィルミナ(@filminaty666)です。

「信じられないほどグロい・・・」

「最悪のラストに声を失った・・・」

「演技が鬼気迫っててすごい・・・!」

などなど不穏なウワサで持ち切りな邦画『ミュージアム』をAmazon Primeで観ました!

よく「似てる」と言われる『セブン』との共通点。

そして相違点を明らかにしながらバリバリ書いていきます!

予告編

『ミュージアム』(2016)

監督:大友啓史

キャスト:小栗旬/妻夫木聡/尾野真千子/松重豊

映画あらすじ

ベテラン刑事の沢村(小栗旬)は飲んだくれていた。

仕事に没頭するあまり家庭を顧みず、愛想を尽かした妻と息子から逃げられてしまったのだ。

やさぐれた彼のもとに奇怪な事件が舞い込む。

腹を空かせた3匹の犬に、生きたまま体を食われた若い女性の死体が見つかったというのだ。

野良犬の胃袋からは「ドッグフードの刑」と書かれた紙切れが見つかる。

これはカエルマスクを被った謎の人物により繰り返される残虐な連続殺人の、ほんの序章に過ぎなかった。。。

犯人を追う中で、沢村はある事実を突き付けられ戦慄する。

本人は知る由もなかったが、事件の中心にいるのは沢村自身だったのだ・・・!

静かながらも目を疑うラストシーンに、あなたはもう立ち直れない・・・。

映画ネタバレ感想

『ミュージアム』と『神曲』

「人生の道なかば。

正道を踏みはずした私目を覚ますと、

そこは暗い森の中だった」

これは詩人のダンテがのこした『神曲-時獄篇-』の一節。タイトルが怖いね!

ダンテは長大な詩の中で、自分を主人公に地獄、煉獄、天国を旅しました。

その途上で彼は、歴史上の人物達が死後の世界でどう暮らしてるかを目撃するのです。

『ミュージアム』は小栗旬演じる沢村刑事が、ダンテと同じく「眠りから醒める」ところから始まります。

後輩刑事の呼び出しを受け、彼が駆けつけた事件現場のトンネル

その奥に3匹の大型犬に食いちぎられた惨殺死体があるわけですが、この演出も『神曲:時獄篇』の冒頭で登場する3匹の動物(ヒョウとライオンとオオカミ)を思わせます。

さらに「トンネルに3匹の犬」で連想されるのが彼↓

ギリシャ神話に登場する地獄の番犬ケルベロスです。

地獄の入り口で死者を待ち構える大型のワンちゃん。

彼は死者を地獄に受け入れ、死者が地獄から逃げ出そうとする時は容赦なくむさぼり食うと言われます(顔がチワワだったら可愛いよな)

つまり冒頭10分の演出により、今作は

「人生の道を踏み外した沢村刑事が地獄を巡る旅」

であると暗示されてるんですね。

ツカミはバッチリ、ザーザー降り続ける雨もわたしの不安感を掻き立て、いや~ワクワクが止まりません!

※『セブン』でもやはり『神曲』が重要なモチーフとして使われています。

これら以外にも『神曲』を活用した作品は、現代に至るまで数多く作られてきました。

たとえば宮崎駿『風立ちぬ』『ジェイコブス・ラダー』『インフェルノ』などが有名です。

色んな映画をいっそう楽しく観る手段として、聖書、ギリシャ神話、ジョーゼフ・キャンベルがまとめた物語の型、などと同じくらい役立つと思います!

犯人は概念か?個人か?

ジョン・ドゥ

映画史に名を残す悪役”ジョン・ドゥ(John Doe)”

『セブン』でケヴィン・スペイシーが演じた凶悪犯の登場シーンを観るたび、初見時(小4)のトラウマがよみがえります。

彼は堕落した現代人への恨みつらみを晴らすため、キリスト教の「7つの大罪」に見立てた凶悪犯罪を重ねるサイコ野郎。

標的は「大食」「強欲」「色欲」「怠惰」「高慢」「憤怒」「嫉妬」それぞれの罪を象徴する者たちです。

ここがポイントなのですが、ターゲットは皆ジョン・ドゥが”個人的な恨み”を抱く人物ではありませんでした。

ジョン・ドゥという名前自体が日本でいう「名無しの権兵衛」の意味。

単一の人格というよりも、彼は脚本家が抱く”現代に対する不満感そのもの”である事がここからも伺えます。

また、ジョン・ドゥの経歴や縁故関係は一切語られず、ほとんど感情すら露わにしない。

このキャラクター性も「こいつ、人間じゃない…」という恐怖を際立たせゾクゾクします。

霧島早苗

それに対し『ミュージアム』の犯人・霧島早苗一人の人間です。

霧島が被害者たちを殺害したのは、「自分の計画をジャマしたから」という”個人的な恨み”によるもの。

さらに霧島は家族がおり、感情の発露も旺盛な人物として扱われます。

以上が「概念」のジョン・ドゥ、「個人」の霧島早苗という、両者のワルさの主な違い。

なのですが。

霧島の犯行動機に限っては、個人の範囲で収まらない大きな問題提起が含まれていました。

霧島という男が意味するもの

自分が犯行を重ねる目的を、霧島はこう述べます。

「僕は表現者だ」

人を楽しませるアーティストだ!」

霧島にとって殺人はアートであり、被害者は作品の材料に過ぎないと言うのです。

そして霧島により「作品の材料」として選ばれた被害者は、数年前に起きた「幼女樹脂詰め殺人事件」の裁判で、裁判員を担当した人々でした。

裁判員たちの判断で被告人は有罪となり、死刑判決を受けます。

しかし。

結果的に、被告人は冤罪であった事が明らかになります。

本当の犯人は霧島だった。

この判決は霧島にとって、自分の「作品」を裁判員たちが奪い取り、被告人に横流ししたのと同じ。「作品」を奪われ憤慨する霧島はこう続けます。

霧島「メディアが作った印象と、わずかな状況証拠だけで。

シロウトの馬鹿どもの浅はかな判決のせいで」

ここで霧島はメディアに言及

霧島が放ったこれらのセリフに思わず

「うお、受け手の倫理観を試しにくるタイプの映画だ」

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と身構えました。

霧島がやっている事の本質はこういうこと。

「自己実現の手段として/他人を搾取し/娯楽として人々に提供する」

マスメディアが日常的にやっている事と変わらない。

不倫した芸能人を吊るしあげたり、

政治家のスキャンダルを執拗に追及したり、

アイドルの熱愛を糾弾したり。

そこには必ず、

「”悪者”に石をぶつけるよう扇動するメディア」と同時に

「応じる消費者」が存在します。

メディアのあおり報道を、”残虐な殺害方法”という形で象徴化し、擬人化したのが霧島という男である。

そういう見方をした結果、

「人間をこんなヒドイ方法で殺すなんて、霧島は悪いやつだ」

「とは思ったものの、自分もたまにTVの偏向報道を面白がってないか?」

「それってメディア=霧島と自分が共犯関係って事じゃないか…?」

そんな疑いが自分に生じ、後ろめたくなりました。

ちょうどデヴィッド・リンチの『エレファントマン』と同じで、「自分は善の側」と盲信して観たらまんまと足をすくわれる構造なのだと思います。

「人が人を裁くこと」

別の悪役

今作の悪役は霧島だけではありません。

沢村刑事の妻・ハルカですが、彼女は確かに霧島から誘拐され、命の危険にさらされた被害者です。

しかし同時に、不十分な証拠に頼って「裁き」を下し、無実の人間を死に追いやった張本人でもあります。

さらにハルカは夫をも「裁き」、別居するという選択を取りました。

そして作品の終盤。

彼女はゴシップカメラマンからこう声をかけられます。

「無実の人間を死刑にした気分はどうですか?」

彼女はこの後「悪」として断罪され、「裁き」を受けるのかも知れません。

延々と続いていく「裁き」のループ。

これは後味が悪いったらありゃしない(100%ほめ言葉)今作のラストシーンが暗示するテーマでもあります。

そして、この展開で思い出した映画がありました↓

「復讐するは我にあり」

ニコラス・ウィンディング・レフン監督による『オンリー・ゴッド』

「他者に対して自分で復讐を行った人間は、神の裁きを受け悲惨な末路を辿る」

という主題を持つ作品で、原題を”Only God Forgives”といいます。

新約聖書の教えである「赦すも裁くも神しだい」を意味する言葉です。

「人間は神と違い、世界の真理を知る事ができない」

「不完全な存在である人間が真理を分かったと錯覚し、

自ら人間を裁くなど言語道断」

「裁きは神に任せておけ。人間の怒りも悲しみも、神は全て知っておられる」

『ハムレット』も、

『オンリーゴッド』も、

コーエン兄弟の『トゥルー・グリット』も。

自分の手で復讐を果たした「罪人」たちは、みんな因果応報で神の裁きを受けました。

『ミュージアム』に神は現れないように見えます。しかし。

ハルコは自分の中にある「良心」という神に苦しみ続けることになるのです。

『ブラックジャック』の本間先生の名言を借りればこういう事でしょう↓

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて

おこがましいとは思わんかね・・・・・・・・・」

因果応報を信じるのは楽観的?

「神が正しい裁きをもたらしてくれるだって?そんなのは幻想だ」

「世界は悪意に満ちて、善人は痛い目を見るばかりだ」

そんなペシミスティックなテーマを多く打ち出してきたウディ・アレンという男もいますが、彼の作品はまた別の機会にレビューします。

妻夫木聡の演技がすごい

カエルマスクの下には・・・

カエルの正体、霧島早苗を演じた犯人役は妻夫木聡です。

スキンヘッドで特殊メイクを施した妻夫木君の容貌は、一見誰だか分からない程のインパクトがありました!

狂気のアトリエ

禍々しさ満点な霧島の「アトリエ」もまた『ミュージアム』の主役の一つ!

凶悪犯の趣向を反映した厭(いや)な部屋はホラー/サスペンス映画の醍醐味の一つでもあります。たとえば・・・

『悪魔のいけにえ』レザー・フェイスの部屋↓

『セブン』ジョン・ドゥのアパート↓

『SAW』ジグソウの浴室↓

『クリーピー』香川照之の隠し部屋↓

『ドラゴンタトゥーの女』ステラン・スカルスガルドの地下室↓

霧島のアトリエもこれらを思わせる、陰湿で、凶悪で、グロテスクこの上ないプロダクションデザイン。や~たまらんです。

実際ジグソーパズルが登場したり、最初の犯行ではノコギリ(SAW)を使用したりしてるので、『SAW』リスペクトは多分にあるんじゃないでしょうか。

沢村への歪んだ愛情

仕事にかまけて家庭をないがしろにし、妻子の心を「殺してしまった」のが沢村という男。

殺人の美学を追求する霧島はこう語ります。

「この女(ハルカ)は生きながら死んでいる。」

「どうやったらこんな殺し方ができるんだ!」

沢村を「同業者」として、歪んだ敬意を捧げているのです。

『ダークナイト』のジョーカーが、宿敵バットマンを大好きで仕方ないのと似た愛憎を感じる。

ハンバーガー

大貫妙子の”メトロポリタン博物館”をウキウキと歌いながら謎の肉を使ったハンバーガーを作るシーンも、気持ち悪さにテンションMAXです。最高です。

『キングスマン ゴールデンサークル』の某シーンだったり、

漫画『封神演義』のトラウマシーン

などを嫌でも思い出させて非常に胸くそ悪い!(圧倒的ほめ言葉)

おわりに

隅々まで徹底した胸クソ演出は、2010年代の「厭(いや)な邦画」を代表する一本として語り継がれる事でしょう。

『ミュージアム』にハマったあなたは『ヒメアノ~ル』『クリーピー』『冷たい熱帯魚』なども厭(いや)さが青天井でオススメです!

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