映画『激怒』(1972) 感想と評価

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ジョージ・C・スコットが監督デビューを果たし、主演も務めた『激怒』(1972)について。

映画データ

『激怒』

(原題:Rage)

監督:ジョージ・C・スコット
撮影:フレッド・コーネカンプ
編集:マイケル・カーン
出演:ジョージ・C・スコット/マーティン・シーン/他

あらすじ

アメリカ西部ワイオミングで牧羊を営むローガンは、一人息子クリスとキャンプに出かけた。

その折。猛毒神経ガス”MX3″を運搬中の陸軍ヘリが、操作を誤ってガスを空中散布してしまう。そしてその下にはローガン親子がいた。

翌朝目覚めると、息子クリスが鼻血を出し意識不明の状態。ローガンは急ぎ病院に駆け込む。

しかし陸軍はこの件に関し、神経ガスや犠牲者の存在を隠ぺいするために工作し始める。

真相を知ったローガンは復讐をこころみるが・・・

映画の感想と評価

ジョージ・C・スコット

「公権力や世の流れに必死で抵抗するも、なす術もなく散っていく者たち」

という、60’s後半~70’s前半に興ったアメリカンニューシネマ的テーマを持った映画です。

監督と主演を務めたジョージ・C・スコットですが、『パットン大戦車軍団』のパットン将軍や『博士の異常な愛情』のバック将軍など、イカつい軍人役が有名ですね。

それが今作では逆に、軍人の凡ミスでヒドイ目に合う善良な市民を演じています。

さすがはパットン将軍の演技に贈られたアカデミー主演男優賞を
「くだらん権威に用はない」
と蹴った反逆児。パブリックイメージを自らくつがえす姿勢がカッコイイ。

『チェンジリング』などもそうですが、傷や哀しみ、弱さを抱えた男を演じるジョージ・C・スコットも良いです。見た目が怖いぶんナイーブな演技がより際立つんですよね。

“精神的に弱い部分を持ったマッチョ”像と言えば、スコットと同じく『博士の異常な愛情』や『ロンググッドバイ』で好演したスターリング・ヘイドンも良いです。

神経ガスの恐ろしさと不吉の予兆

今作では架空の神経ガスの脅威を通して、公権力への批判、人類の負の発明による環境問題が描かれます。

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モデルであろうVXガスは1950年代の初めにイギリスで発明されました。

ごくごく少量で死に至る恐ろしい毒ガスで、劇中のクリス少年のように痙攣、嘔吐、高熱、心肺停止といった症状を引き起こします。

 

VXは無味無臭なせいで、親子は毒ガスが散布されている事に気付きません。

しかし液状のVXは琥珀色で、まるで薄いコーヒーみたいな色なんですよ。

自分たちの上空を陸軍ヘリが「通り過ぎる」際に、ローガンが飲みかけのコーヒーを捨てる。あのシーンはそういう意味なんですね。

直接的に毒ガス散布を伝えるのではなく、あくまでメタフォリカルな演出で語る。

 

このシーンと同様に、
「画面に映っている対象物に関して、これから不吉な事が起こる」
ということをスローモーションで示す演出が何度かあります。これ怖いですね。ネコのシーンとか、息子の服がゴミ袋に入ってるのを目撃するシーンとか。

 

この映画が公開されたのと同じ1972年に、アメリカ政府は神経ガスやマスタードガスを海に捨てることを禁止します。しかしそれは既に32000トンもの毒ガスが海洋投棄された後のこと。

 

その後も人類は学習せず、VXガスがオウム真理教によって密造されたり、金正男の事件などテロに用いられたりと過ちを繰り返します。愚かなものです。

 

後半で泣きながら復讐を決意するローガンが、
光のあたる”こちら側”から闇の”向こう側”に立ち去っていく
この演出以降の、真っ暗な夜と強烈な照明の対比、不気味ですね~。

撮影監督はスコットの代表作『パットン大戦車軍団』のフレッド・コーネカンプです。

空撮で空間の広がりを強調した前半と、閉塞感のある後半のギャップが見事でした。

 

音楽のラロ・シフリンは『ブリット』や『燃えよドラゴン』、『スパイ大作戦』などが有名ですが、今作もによる不穏なムードで良いですね。

テーマ曲の物悲しくも優しいギターとハーモニカの旋律、本当に素晴らしい。

 

というわけで『激怒』(1972)の話でした。ありがとうございました。

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