映画『ルーム』ネタバレ感想と評価:子役の演技がすごい!実話が基のアカデミー受賞作

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フィルミナ(@filminaty666)です。

「10代の少女エリーザベト・フリッツルが、

24年間も地下室に監禁され続けたのち発見された。

犯人は実の父親だった」

2008年にオーストリアで明るみ出た、通称フリッツル事件。

映画『ルーム』はその事件を元にしたエマ・ドナヒューの小説『部屋』の映画化です。

今作でアカデミー主演女優賞を受賞したブリー・ラーソン、

そして息子役のジェイコブ・トレンブレイ(撮影時9歳)による迫真の演技には

「ドキュメンタリーじゃないよな??」と思わせる力がありました。

予告編

『ルーム』(2015)

監督:レニー・エイブラハムソン

キャスト:ブリー・ラーソン/ジョアン・アレン/ウィリアム・H・メイシー

あらすじ

お母さんジョイと2人きりで狭い部屋に暮らすジャック。

彼は生まれてから一度も、その部屋を出た事が無かった。一度もだ。

「世界はこの部屋の中だけ。テレビに映る世界は全部にせものなのよ」

お母さんからこう教えられて育ってきたし、それが当たり前だと思っていた。

そんなジャックに、ジョイはある日こう告げる。

「お母さんは7年前に知らない男に連れ去られて、ここに閉じ込められたの。

そしてあなたが生まれて、育ててきた」

「本当の世界は、この部屋の外にあるの。

作戦を立てましょう、ここから逃げ出すのよ!」

世界の真実を告げられ動揺するジャックとジョイは、誘拐犯を巧みに騙し、外に飛び出すことに成功した。

晴れて自由の身になり、幸せな生活が戻ってくる。

そのはずだったが――――――

ネタバレ感想と評価

こないだ観て面白かった『10 クローバーフィールド・レーン』の話をする方々が、高確率で『ルーム』に言及されるので鑑賞。

『リミット』『ホステル』みたいに、監禁された人間が心身共に追い詰められていくジャンル系サスペンスかな」

その程度の認識で観たのですが、予想と全く違った!

良い意味で驚きました。

「監禁&脱出」のジャンル映画じゃなかった

前半で描かれるのは狭いワンルームで暮らす親子の会話。

何気ないやり取りの中にひそむ

「広い世界を狭くする大人」

「狭い世界を広くする子供」

という対比図式が、テーマを物語っています。

たとえば。

部屋にエサを漁りにきたネズミをジャックが発見し、友達になろうとするシーン。

『ウィラード』『スチュアート・リトル』みたいに、ネズミとの絆が育まれるのか?

そう思いきや、ネズミはジョイお母さんにあっけなく倒されてしまう!

ジャック「友達だったのに!」

ジョイ「ネズミは食べ物を盗みに来たの。ばい菌だって持ってる。友達じゃないわ」

たしかにネズミは不衛生ですし危険です。超・正論。

ただ、「仲良くなれるかも」という柔軟なアイデアは、思考の固まった大人には決して浮かんでこないものです。

「大人」と「子供」が持つ質の差異が序盤で暗示されてます。

子役の演技に感動

ジョイの機転で、”死んだフリ”をして部屋から抜け出したジャック。

誘拐犯オールド・ニックが運転するトラックの荷台から、初めて本物の空を見上げた彼の表情が印象深いです。

もともと外を知らないため、解放された喜びはない。

あるのは広大な未知の世界を目の当たりにした純粋な驚き。

それがSigur Rosを思わせる壮大な音楽も相まって胸に迫ってきました。

犯人も捕まり、親子は家族のもとで新しい生活を送り始めます。

これが他の映画であれば、

「必死に頑張って抜け出したぞ!」

とカタルシスをもたらしてくれるはず。

『パピヨン』『ミッドナイト・エクスプレス』『それでも夜は明ける』

などの主人公たちも自由を手に入れるため、何度失敗しても諦めず、挑戦を繰り返して最後に勝利を掴みます。

私も彼らの姿に沢山の勇気をもらってきました。

しかし。

今作は解放された後に人物たちがどういう心理的変化を辿ったか?

それを描くことで、

「物理的な自由」と

「精神的な自由」は、

必ずしも両立しない。

というテーマを語る点が特徴的です。

『スリーパーズ』などもですが、大デュマが著した脱出劇の古典名作『モンテ・クリスト伯』は、今作をはじめ数多くの作品にヒントを与えています。

この小説はホンットに元気出ます!

岩波文庫で7巻組と大ボリュームなんですけど、ワクワクドキドキが止まらない展開で一気に読めちゃいます。

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ジョイの苦悩

せっかく広い世界に暮らし始めたジョイですが、物憂げな気持ちが晴れません。

「ほかの子たちは普通の青春を送って生きていたのに。

私は7年間も閉じ込められて大事な時間を失った。

それはもう取り返せない」

「世間の人たちは私たちを腫れ物のように扱い、奇異の目で見てくる」

しかもこういう時に必ず起きるのがセカンドレイプ

報道番組の取材を受けたジョイは、インタビュアーからこう尋ねられます。

「ジャック君だけでも逃がす事ができたんじゃない?」

「その努力はしたの?」

当事者の苦しみに想像力を働かせず、分かったような事を言いたがる人は必ず現れます。

ハッキリ明示はされませんが、心の弱っていたジョイはインタビュアーの言葉を受けて

「ジャックを閉じ込めていたのは、私なのかも知れない」

そんな苦悩を抱えたのではないでしょうか。

追い詰められ、ジョイはとうとう自殺を図ります。

一命はとりとめたものの、入院のためジャックとは離れて暮らすことになってしまいました。

さらにその後

「ママは一人で天国に行こうとした」

というジャックのナレーションが入るんですが、そのとき流れる映像がツラさを際立たせます。

すでに部屋から逃げ出した後のシーンなのに、

部屋の中から天窓を眺めて、うつろな表情を浮かべるジョイが映されるんですよね。。

体は解放されても、心は閉じた枠の中から解放されないまま、苦しんでいるお母さん。

彼女の姿には、監禁などされず自由に生きていても、過去の経験や感情にとらわれがちな自分を重ねてしまいました。

ジョイの苦悩は私なんかの比じゃないですけどね。

ジャックの純粋さ

ずっと部屋の中で生きてきたジャックにとって、外の世界は全てが未知で、新鮮で、驚きの連続です。

固定観念に縛られず、環境の変化に極めて柔軟に対応します。

「過去は過去。今は今。切り替えて楽しくやっていこう」

そんな事をわざわざ理屈で考えるまでもなく、自然にやってのけるジャックの純粋さに感銘を受けました。

私など頭が固く、自分でも気づかないうちに

「これはこういうものだ」

と決めつけてしまう事が多くて、日々反省しています。

ジャックのようにヒネくれた心がゼロな子供には、見習う部分が尽きません。

(『私は頭が固い』という固定化した自己認識がすでに固いのでしょうし)

中でも今作で最も印象的だったのがジャックのこのセリフ。

「僕がいた部屋は、この世界よりもずっと広かった」

含蓄があるなあ。。

今の世界とは、つまり大人たちが沢山いる世界。

様々なしがらみで、がんじがらめになった大人たちの世界。

物理的にどれだけ広くても、生きづらく息苦しい思いを抱えて生きていれば、それは自由とは呼べないよね。

私が胸を打たれたのは、ジャックの柔軟さだけではありません。

ジャック本人もまったく意識していない、素朴で自然体な優しさ。

それもまた本作の魅力です。

退院したジョイお母さんとジャックの会話がこちら↓

ジョイ「ダメなお母さんだね」

ジャック「でもお母さんだよ」

いい子すぎて、眩しい!

それに引き換え自分の心の汚れ具合ときたら!

書いててどんどんツラくなってきました!

普段の生活でも、心に余裕がなくなるとついつい「あいつはダメだ!」などと他人の粗探しをしてしまいがち。

いつでもおおらかに、その人その人の良さを見つけられる人間になりたいもんです。

さらに、髪を切ってくれたおばあちゃんへの言葉。

I love You,Grandma”

「おばあちゃん大好き」

この世界一ありふれた言葉が、ここまでストレートに響く映画を観た事がありません。

分別だとか打算だとか、その手のフィルターを一切通さない、無邪気な子供の「アイラブユー」がこれほどまでに美しいとは。

このシーン、カメラが引きなのも好きです。

「この素朴で幸福な一コマが、ドラマだけでなく人々の日常に溢れてほしい」

そう思わせる距離感でした。

子供の自然な振る舞いが、周りの人の心を解きほぐす。

じんわりした余韻はスティーブン・ダルドリ-『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』と近いものを感じます。

犬で思い出したこと

今作にちょろっと登場する犬を見て、ラッセ・ハルストレム監督『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』を思い出しました。

こちらの主人公も薄幸な少年。

お母さんは重い病気で、大事な飼い犬は行方不明になり、感情表現の不器用さから自宅でも親戚の家でも疎まれる。

ツラいことの積み重ねに耐え忍び、日々を送る少年の独白が印象深いです。

「僕は不幸だ。でも、スプートニク号に無理やり乗せられて宇宙から帰ってこれなかったライカ犬よりはマシだ」

大きな起伏のある物語じゃないんですが、少年が恵まれない境遇を乗り越えて少しずつ成長する姿には、静かに静かに心が沁みます。

おわりに

心がすさんだ時に、後半だけでもまた見返したい!

日々のイザコザで疲れたあなたにオススメしたいです!

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フィルミナ:@filminaty666

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