映画『エンジェル・ウォーズ』(2011) ネタバレ感想と評価

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フィルミナ(@filminaty666)です。

今回はザック・スナイダー監督の「創作そのものへの哲学」が爆発した『エンジェル・ウォーズ』について書きます。

美少女がファンタジー世界でドンパチ戦うだけの映画じゃないぞ!

予告編

映画データ

『エンジェル・ウォーズ』

(原題:Sucker Punch)

2011年/アメリカ
監督:ザック・スナイダー
出演:エミリー・ブラウニング/ジェナ・マローン/オスカー・アイザック他

ネタバレ感想と評価

2回、観て下さい!

今作、最初に観た時は面食らったのなんの。

『インセプション』よろしく虚構と現実が複雑に組み合わされているため、

展開に翻弄されチンプンカンプン。

「ザック・スナイダーがオタク趣味を全開にしただけの作品じゃないのか?」

「妄想シーンと現実シーンのギャップありすぎ!しかも必然性がない!」

などとプンプンしたものですが、何だか気になるものがあり、2回目を観たんです。

そしたら最後には感動で拳を突き上げてましたね

無軌道に見えた演出も、すべて必然だらけ。

まず全体のテーマですが、冒頭で『劇場の幕が開く』時点ですべて明かされています。

つまり「これは虚構 = 夢 = 妄想について語った映画だよ」という意志表示。

続いてこんなナレーションが入ります。

「誰もが自分だけの天使に守られている

ある日は老人、次の日は少女、外見は優しくてもドラゴンのように荒々しい。

しかし一緒に戦ってはくれない。心の奥からあなたに囁くだけ。

『誰もが世界を変える力を持っている』、と」

「天使」とは何を表しているのでしょう?

自分を育てた文化への愛と敬意

巨大ロボット暴れまわる!

火を噴くドラゴン飛び回る!

巨大なサムライ切りかかる!

主人公のベイビードールが繰り広げるド派手な妄想バトルシーンは、

ザック・スナイダーが愛し、影響を受けてきたカルチャーのベスト盤みたいなもの。

そのすべてが彼にとっての「天使」という事です。

ただナレーションにもある通り、天使は自分の現実を直接に変えてはくれません。

じゃあ誰が変えるのか?↓

ウソから出たまこと

映画も、文学も、音楽も、美術も、結局すべては嘘っぱち。

でも、嘘っぱちの世界に登場する人物たちが立ち向かう困難、挫折、成功、

彼らの冒険を疑似体験することで、私たちは様々な感情や考え方を手に入れます。

そして振り返れば、それは現実社会を生きる上での糧になっていませんか?

虚構のおかげで自分の考えが変わり、

考えが変わったおかげで行動が変わり、

行動が変わったおかげで自分の現実が変わっていく。

だとすれば世界に

「現実と幻想」

という二元論のボーダーラインを引くことは不可能ですし、

引く必要もないんじゃないでしょうか?

“夢と現実が行ったり来たり”という設定のお話は他にも星の数ほど。

しかし、その手法を単なる作劇上のエンタメ要素ではなく

「夢は現実を変える元気をくれるんだ!」

という哲学を伝えるため活用したザック・スナイダーの姿勢を尊敬しますし、

たいへん共感を覚えます。

自分という存在も誰かの夢かも知れない

ラストシーンにはさらに驚きました。

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最後にスイートピーが乗り込んだバスの運転手さん、あなた、

妄想シーンで何度も美少女戦士たちを鼓舞してくれた謎の老人じゃないですか!

それに彼女の前に並んでた少年、きみ、塹壕戦の妄想シーンで出会った子じゃないか!

つまりこの物語は、

家出したスイートピーがバスに揺られながら観た、つかの間の夢だった

ことが明らかになります。

こういう構造ですね↓

①映画を観る私たち

②映画内の現実:スイートピーが家出してバスに乗り、眠りに落ちるまで

③夢の第1階層:精神病院 = バスの中でスイートピーが観た夢

④夢の第2階層:ベイビードールが繰り広げる妄想

よく観ると、それを示すヒントは何度も散りばめられてます。

例えばスイートピー自身が序盤で「ショーの主役はわたし」と言ってたり。

序盤で流れるBGMで「空に足、地面に頭」と歌われてたり。

この歌詞は、ラストシーンが物語の始まりである事の暗示に聞こえました。

この世界自体が誰かの夢かも知れない。

であれば夢も現実も大差はない。

「人間は

ウツロ(虚)な世界と

ウツツ(現)の世界を

ウツロう(移)だけの曖昧な存在なのだ」

その世界観は昔から色んな人々が提唱してきました。

・荘子の胡蝶の夢

・グノーシス主義

・旧約聖書のコヘレト書

創作物であれば

・ゼルダの伝説~夢を見る島~

・ドラゴンクエストⅥ

・ダンセイニ卿『ぺガーナの神々』

・ホルヘ・ルイス・ボルヘス『円環の廃墟』

映画ならば

『アイズ・ワイド・シャット』、『ステイ』、『インセプション』、『ビッグ・フィッシュ』、『パンズ・ラビリンス』、『ザ・ウォード』、『バードマン』、『ブラックスワン』、『バンデットQ』などなど、キリがありませんね。

その一つである『エンジェル・ウォーズ』もまた、

夢と現実のボーダーなんて分からない、と言い切ります。

しかしそれで

「この世なんて虚しいもの。。。」

とニヒリズムにおちいったり、厭世的になったり、ペシミスムに浸ったり、

なんて事はしません。

「夢と現実は互いに影響し合って、未来を切り開くエネルギーに変わる!」

そんなポジティブな想いに溢れているからこそ、この映画に心が揺さぶられるのです。

アウトプットすること

そして最も大事な点ですが、

ザック・スナイダーはたくさんのカルチャーに影響を受けたのち、

「実際に映画を作る」というアクションを起こしました。

彼に限らず全ての表現者は、何かに感動するだけでなく、

それらを自分の中で咀嚼して、編集して、新たな価値として世の中に送り込みます。

そして生まれた表現=虚構が誰かの旨に届き、

その人が生きるエネルギーに変わったら、

それこそが自分を育ててくれた「嘘っぱち」に対して

表現者ができうる最大の恩返しではないでしょうか?

夢を見ることは素晴らしい。

でもそれだけじゃダメだ。

戦え!行動せよ!

暮らしの中で落ち込むことがあったら、

きっとこの映画が支えとなってくれる事でしょう。

最後にラストシーンのナレーションを引用して幕を引きます。

ありがとうございました!

誰が物語の主役なの?

誰が物語の幕を引くの?

誰が私のダンスの振り付けを決めるの?

誰が私を狂気へと追いやるの?

誰が私たちを苦しめ、成功を称えてくれるの?

誰が愛する人に名誉を与えるの?

誰が私たちを試し、同時に生きる力を与えるの?

誰が真実とウソを見分けられるの?

誰が私たちを守るために犠牲を払うの?

誰が私たちを縛るの?

誰が私たちを自由にするカギを握っているの?

それはあなた自身。

武器は揃ってる。

さあ戦って!

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