映画『ブラジルから来た少年』(1978) 感想と評価

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タイトルから『いなかっぺ大将』と『未来世紀ブラジル』を混ぜたような映画だと思いこんでましたが全然違いました。

予告編

映画データ

『ブラジルから来た少年』

(題:The Boys from Brazil)

  • 1978年/米・英/125分
  • 監督:フランクリン・J・シャフナー
  • 原作:アイラ・レヴィン
  • 撮影:アンリ・ドカエ
  • 音楽:ジェリー・ゴールドスミス
  • 出演:ローレンス・オリヴィエ/グレゴリー・ペック他

解説

『ローズマリーの赤ちゃん』『デス・トラップ 死の罠』で有名なアイラ・レヴィン原作のサスペンス映画です。

原作が1976年発表なんですが、翌年にはもう映画の製作が始まってるんですね。

この頃の出版社は、ゲラ段階の本の映画化権をフライングで映画会社に売るという事が少なくなかったらしいです。

監督は『猿の惑星』『パットン大戦車軍団』『パピヨン』などを撮ったフランクリン・J・シャフナーがやってますが、当時日本では劇場公開されませんでした。

第二次世界大戦が終わってから30年たった頃の話で、主人公はリーベルマンというユダヤ人のじいさん。

戦後も世界各地に隠れているナチスの戦犯ってのが当時、沢山いまして。そいつらを何十年も探し出しては逮捕に貢献してきたという、執念深い人ですね。

彼のモデルはサイモン・ヴィーゼンタールという実在の人物でして。本人は1000人以上もナチスの戦犯をサーチ・アンド・デストロイしたそうですよ。デストロイはしてないですが。

この人をローレンス・オリヴィエが演じてますね。

もともとシェイクスピア劇をたくさん演じてきた俳優さんなんですが、他にも『レベッカ』のお屋敷の主人とか、『バニーレークは行方不明』の刑事とか、『スパルタカス』ですとか、名作がゴロゴロあります。

個人的には『マラソンマン』で演じたナチスの残党の凶悪な歯医者、あの演技が忘れられません。

ダスティン・ホフマンの歯をドリルでギュイーーーーーン!と穴あけるっていう拷問をやるんですけど、あれが怖すぎて歯医者行くと必ず思い出しちゃいます。

それが今作では逆に、戦犯を執念深く探し続けるユダヤ人ナチハンターやってるのが面白い。

しかも両作ともにアカデミー助演/主演男優賞にノミネートされるという。

一方で悪役のヨゼフ・メンゲレは同じく名優グレゴリー・ペックが演じてます。『ローマの休日』の新聞記者の。

グレゴリー・ペックは映画の中でも実生活でも、たいへん紳士的な好人物だったそうですよ。

それが今作ではヒトラー総統の細胞からクローン人間達を作り出し、ドイツ帝国を復活させようとするマッドサイエンティストの役をやってます。

しかし、素の顔だとあまりに良い人オーラが出すぎる。

それでわざわざ特殊メイクで悪人ヅラにしてもらったらしいです。

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こっちは特殊メイクしてでも好紳士の顔になりたいというのに!

彼が演じたヨゼフ・メンゲレも実在の人物ですね。

遺伝科学の大家フォン・フェアシュアー教授の助手として、アウシュビッツ収容所でユダヤ人たちに残虐な生体実験を加えていた狂気の医者です。

麻酔なしで四肢を切断して別の人間の体と繋げようとしてみたり、頭蓋骨を切り開いて脳を露出させたり。

双子の体を手術で結合させて生体機能を維持できるか観察したり。

普通の人間を「優れた人種アーリア人」に改造するという発想から、こういうイカれた実験をずっと繰り返してました。日本軍の731部隊みたいな奴らですね。

要するにクソッタレなんですが、一方で子供の囚人達から「ヨーゼフおじさん」と呼ばれ慕われたり、その子らを車に乗せて敷地内を楽しげにドライブしたりと、“表向き”優しく温厚な人物だったとも言われます。

それが数日後にはその子たちを実験台に乗せて鬼畜の所業に及ぶわけですから、もうワケが分からんです。

あとブルーノ・ガンツも出てます。

遺伝工学の知識でリーバーマンを間接的に助ける教授の役ですね。

彼も逆に『ヒトラー最期の十二日間』ではヒトラーを演じてました。

終盤にはリーバーマンとメンゲレのバトルシーンもあります。

二人ともおじいさんなもので激しい殴り合いではなく、ゆっくりした掴み合いになってるところに何とも言えない味わいがありますね。

それからヒトラーのクローンとして作られた子供たち出てきますが、どの子も同じ顔で、冷たく非人間的な雰囲気なんですよ。

ヒトラーの遺伝子を持つから、というわりと強引な理由で。

遺伝子で人間性が全て決まるって設定、やっぱり当時けっこう叩かれたみたいです。

にしても大ケガで動けないリーバーマンを見つけるや「すげえ!」と写真に撮り始めるあたり、サイコ極まってますね~~。

ブラックメタルっていう音楽ジャンルがあって、そのエピソードを思い出します。

悪魔を崇拝し、キリスト教の教会を燃やしたり、他のバンドのメンバーを惨殺したり、っていう凶行をよくやる人たちなんですね、ブラックメタルのバンドマンというのは。

メイヘムってバンドが代表的なバンドの一つなんですが、このボーカリストが、コタール症候群だったのか自分をゾンビだと信じていたようなんですよ。

で、ある日自分の頭をショットガンでぶち抜いたんですが、バンドメンバーもそれを発見するや否や「すげえ!」と写真に撮ってアルバムのジャケットに使用したそうです。

それ思い出しましたね、はい。

それから「自らの作り出した者に滅ぼされる」設定は、古代の神話の時代から世界中にある型ですが、今作の場合はフランケンシュタイン博士の怪物を特に思い出しました。

「ヒトラーの子供だからと言って、何もしていない子供を危険視して殺してもいいのか」

という倫理的な問題も扱われるんですが、これ難しいところですよね。

ストーカー問題なんかでも「迷惑行為はするけど捕まえるほどではない」と警察が放置してたら悲惨な事件に繋がった。なんて話はよく聞きますし。

善と悪の境目はどこで判別できるのか、という問いかけは『LAギャングストーリー』『ダークナイト』『奴らを高く吊るせ!』『許されざる者』などを思い出します。イーストウッド的な命題。

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