流浪の救世主による英雄譚『ベイブ/都会へ行く』(1998)

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『ベイブ』(1995)についてビジネス/リーダー論の視点から書きましたので、今日は『ベイブ/都会へ行く』(1998)の話を。

映画データ

『ベイブ/都会へ行く』

(原題:Babe: Pig in the City)

1998年/オーストラリア/97分
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー
製作:ジョージ・ミラー
出演:ブタ/イヌ/お猿/他

『マッドマックス~怒りのブタロード~』

あらすじ

“見知らぬ街にたどり着いた一人の流れ者。彼は現地の民に捕縛され奴隷となるが、ある出来事をきっかけに権利を勝ち取り、拘束を解かれた。また、彼は現地の民がある問題に苦しんでいる事を聞かされる。流れ者は民を救うために苦難を乗り越え楽園へと導いた”

この構造ですが、ほぼそのまま『マッドマックス 怒りのデスロード』や『マッドマックス サンダードーム』にも当てはまりますね。

ゾロアスター教のサオシュヤントや出エジプト記のモーゼなど。
流浪のヒーローが弱者たちを導く神話は、古くから世界各地に語り継がれています。
映画であれば『シェーン』が著名ですね。近年なら『メイズランナー』などもその枠。

ジョージ・ミラーもまた『マッドマックス』シリーズを始め、自らの作品で神話体系を構築する理念を持つ監督です。『ベイブ』シリーズもやはり例に漏れません。

テーマ「いちど失った生き物の尊厳を取り戻す戦い」

1作目は固定された空間で、ベイブ自身が生き物としての尊厳を手に入れる話でした。

2作目は支配者に奪われた弱者たちの尊厳をベイブたちが取り返し、楽園に導く形式。

構造も『怒りのデスロード』と同じく、楽園から地獄を経て再び楽園に「行って帰る」話で、もはや『ベイブ』の続編というよりも『マッドマックス』シリーズのスピンオフ作品として観る方がしっくりきます!

なんでブタなのか?

まず支配者から搾取され蔑まれてきたブタという生き物を革命の主人公にするところが、マッドかつ物語として高い必然性を持っていて素晴らしい。

これは『スカーフェイス』などにも共通するポイント。
キューバから逃れてきた流れ者が、金なしコネなし知識なし、虐げられた状態から徒手空拳でのし上がっていく姿は今作におけるベイブそのもの。スカーフェイスは自滅するけども。

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ベイブが強いライオンとかだったら説得力が薄れるもんね。「お前、強者じゃん!」って。

また、前作で描かれた支配システムは、人間社会における

「人間(経営者) > 人間(中間管理職) > 人間(労働者)」
の構図を
「人間(支配者) > イヌ(中間管理職) > 家畜(労働者)」

に転調したものでした。

今作でも支配層に対する革命が謳われますが、「ベイブが鋲の首輪をはめる」というシーンは、彼が再びマックス的反逆者となった事を表す描写でテンション上がります。

聖域

人間が去ったホテルに構築される動物だけの社会は『サンダードーム』の子供集落に近い。
ベイブは穏便に政治をしきるので安心して観てられますが、これまかり間違えば全体主義化してジョージ・オーウェルの『動物農場』になってたのかな~なんて考えるとコワイ。

人間たちに聖域の存在がバレて動物たちがみんな保健所に連行される展開もハラハラです。

広い都会の中で狭いゲットーに押し込められたユダヤ人たちが、とうとうナチスによって収容所へ連行される光景にも見えました。

マックス的ビジュアル演出

今作が『マッドマックス』シリーズの一つだという事は、テーマだけでなく表に現れた演出の数々からも言えます。

強い女性が先頭に立って戦う
身体的不具者の存在
バンジー装置で空間をビョ~ン(サンダードーム及びドゥーフ・ウォリアー)
ホゲット夫人に絡む不良たちのビジュアル

などなど、類似点を探せば枚挙にいとまがありません。

詰まっていた水道からジャバーッ!!と水が流れ出す、”解放”を端的に表したエンディングも『怒りのデスロード』におけるシタデル砦の滝を思わせます。

トラック・ショットで被写体にぐぐっ!と寄るカメラもミラー節ですね=。

それから全編を通して動物の視点がメインなので、おのずと下から見上げるアングルのカメラワークが多い。

それが画面に重厚感を与えていると同時に、広い意味でのカーアクションシーン(ベイブとピットブルの追いかけっこや、トラックにしがみ付く犬)ではマシンの威圧感とスピード感を演出する方法としても活きているのがスゴイ。

「必然的にそうなる」という要素が同時に演出にもなっている。匠だ。

細かい点だと、裁判を受けるホゲット夫人の後ろに座ってる傍聴人が全身タトゥーで半裸かつローラーブレードを履いているマックス感マックスな風体なのも最高です。

『ハッピーフィート』については別の機会に!

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