『宇宙よりも遠い場所』よりもい感想~評価~考察(1)それぞれの「南極」編

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フィルミナ(@filminaty666)です。

アニメ『宇宙よりも遠い場所』に激しく心を揺さぶられ、南極から意識を呼び戻すのは大変でした。

今も感動の余韻でPC画面がぼやけがちですが、

「このアニメを観るだけで、人生に必要な本質がすべて学べるんじゃないか?」

そう思い、ひとつネタバレ全開でバリバリ書くことにしました。

南極ではなく、彼女たちが心に抱える「南極」とは何だったのでしょう?

『宇宙よりも遠い場所』記事一覧

【ソフト一覧】

1話/2話/3話 を収録

4話/5話/6話 を収録

7話/8話/9話 を収録

10話/11話/12話/13話 を収録

オリジナル・サウンドトラック

憂鬱なのは幸せだから

あなたには成功体験がありますか?

「学生の頃に部活に励んだ!」

「受験勉強を頑張った!」

「営業成績でトップに立った!」

小さなものから大きなものまで様々だとは思いますが、

そんな経験があるあなたは恵まれています。

しかし。

大きな負荷を自分にかけなくても、

日本に住んでれば最低限は生きていけちゃうんですよね。

少なくとも行き倒れになる事はない。

幸か不幸か。

物語のはじめ、主人公キマリちゃんの日常はこんな調子でした↑

「毎日お母さんが作ってくれるご飯を美味しく食べ、

両親が建ててくれた暖かいお家に住み、

なんとなく幸せ

だけど特に目的もなく、目標もなく、

起伏のない日々がダラダラと過ぎていく」

「モヤモヤするな、スッキリしないな」

と、漠然とした焦燥感と不安感だけが付きまとって離れない。

「学生時代のおれがいる!」

というのが私のキマリへの第一印象でした。

他にも身につまされた方いませんか!

のんべんだらり幸せな毎日だと、問題意識を抱かない。

問題意識がないから行動しない。

行動しないから結果も出ない。

たとえ結果が出なくても、行動さえすれば

「私はこれだけ行動した!」

と自己肯定感が持てるのに。

彼女たちが通う学校は、極端に暗~い色調で描かれます↑

これは「キマリさんの心にはこう見えている」という表現主義的な方法。

彼女のモヤモヤした現状や、個性を抑圧する社会システムの象徴、学校。

これもまた、今作を楽しむために欠かせない要素です。

そんな折、キマリさんはふとした偶然で

「南極に行きたい」

と稀有壮大な夢を持つ少女、しらせさんと出会います。

彼女の影響で

「わたし、モヤモヤした自分を変えたい!しらせちゃんと南極に行くんだ!」

そう決意したキマリさん。

その日から彼女たちの暮らしは一変。

たくさんの行動を通して、彼女たちはどう変わったのでしょう?

そして、この作品を観た私たちはどう変わっていけるのでしょう?

南極が意味するもの

「南極に到達する」

という具体的な目標の裏側には、

「現状の自分にとって途方もなく大きな壁を、

自分で作り、自分の力で乗りこえる」

という本質があります。

場所としての南極にたどり着く過程で、

主人公の女の子たちはそれぞれが心に抱える「南極」を見つけ、

恐れながらも真っ直ぐ向き合いました。

↑それぞれ別の方向を指さす主人公たち。

「心を一つにー!同じ目標をー!達成ー!!!!」

という熱さはなく、互いが互いのバラバラな「南極」到達をサポートし合う構造です。

4人がもともと共通の目的を持ってたとしたら、私こんなに感動しなかったと思うんですよ。

今作は目的がバラバラな相手をいたわり合うからこそ、友情の美しさが際立つんです。

「利害?関係ないよ。わざわざ口に出さないけど、友だちってそういうものじゃない?」

そんなしらせさんの声が聞こえてきそうです。

大人になり、汚れちまった私の心にはこういう細かな演出がちくいち刺さるわけで。

キマリさんの「南極」

「物語は “父親” を殺すためにある」とよく言われます。

父親は未熟な自分を守ってくれる環境の象徴。

『オイディプス王』やギリシャ神話のゼウスによるクロノス打倒などが典型です。

物語の主人公が”父親”を殺す例は、昔から世界各地の伝承に見られます。

これは「居心地の良い環境を自主的に離れることで、初めて一人前の大人になれる」という道徳観を表し、“イニシエーション”と呼ばれます。

キマリさんは小さな頃から、頼りになる親友めぐっちゃんにすがって生きてきました。

疑似的な “父親” であるめぐっちゃんから離れ、自分一人で道を選ぶ。

それができれば、自分は成長できるんじゃないか?

キマリさんはその胸中を第5話で明かします。

「私、ずっと思ってた。

遠くに行きたいとか、ここじゃいやだとか、自分が嫌いだ、とか。

でもそれってなんでなんだろう?って。

多分、めぐっちゃんなんだよ。

私、いつもモタモタして、めぐっちゃんに面倒みてもらって、

『どうしようどうしよう』ってくっついて回って。

それが嫌で、変えたいってずっと思ってたんだと思う。

めぐっちゃんにくっついてるんじゃなくて、ダメだなじゃなくて、

ゲームの相手になれるくらいに

そしてキマリさんは朝日の中を元気いっぱい、一人で出発しました。

彼女の「南極」は他のキャラと違い、実際に南極に着く前に一応の決着を見たわけです。

ただし、それだけでは終わりません。

彼女の行動はさらに輝かしい結果を生みました。

それはキマリさんだけでなく、

『よりもい』の作り手だけでもなく、

すべての創作者にとって理想の未来像

『宇宙よりも遠い場所』が託された理想像を理解するためには、まずめぐっちゃんが持つ本質を整理する必要がある。

そう考え、自分なりの「めぐっちゃん」論をまとめました↓

ご参考になれば幸いです。

日向さんの「南極」

信頼していた人物から裏切られた経験はありますか?

今以上に未熟だった私は以前、

友人関係のもつれで「裏切られた!」と自分勝手に傷つき、

以降は心がポッキリ折れるのを防ぐため、こんな考え方をしていました。

「他人とは関わるし表向き楽しく話すけど、

心を開いたり、深く付き合うのはやめよう」

そのうえ

「人間の真理に到達してしまった、、諦めに酔い、達観したオレ、、」

と思い上がっていたフシも。

『ルールズ・オブ・アトラクション』を拡大解釈していたのでしょう。

そんな私が今作でもっとも共感し、自分を重ね合わせたのが日向さんでした。

「人間には悪意があるんだよ、悪意に悪意で向き合うな」

などのセリフが示すように、彼女もどこか達観したような発言が目立ちます。

しかしそれは、人間的な成長による達観ではありませんでした。

それが明らかになるのが第6話。

パスポートを紛失した日向さんを気遣うしらせさんに対し、

日向さんがこぼした言葉を引用します。

ごめん

しらせ、気を遣ってくれてるのにさ。

私、こうゆうの駄目でね。

それが普通だって分かるんだけど、

誰かに気を遣われるとさ、

居心地悪くなるっていうかさ、

(相手の)本心が分からなくなるっていうかさ。

だから高校も無理!ってなって、

なるべく一人で居ようと思って」

さらに日向さんはこう続けます。

「しらせはさ、誰よりも南極行きたいって思ってるんだろ?

ずっと思って来たんだろ?

それ最優先でいいんだよ。

そっちの方が気持ちがいい!私が!

日向さんが抱える「南極」は、他人と人間関係を結ぶことへの恐怖心です。

「私が気持ちがいいから」は

「しらせより私の心が大事」

と同じなんですが、それに気付かず無邪気に言ってしまったところに、彼女の未熟さがありました。

一見しらせさんへの優しさにも見えるけど、

「仲良くなりすぎたら裏切られた時にまた傷つく」

その恐怖に負けて、せっかく自分を思ってくれるしらせさんを突き放してしまった。

しらせさんの心は傷ついた事でしょう。

それに相手との信頼関係が築けていれば、「ごめん」だけじゃなく「ありがとう」も出るはずなのです。

しかし、それでも諦めないしらせさんの叫び。

今作のベストシーンの一つです。

「気を使うなって言うならはっきり言う!

気にするなって言われて気にしない馬鹿にはなりたくない!

先に行けって言われて先に行く薄情にはなりたくない!

四人で行くって言ったのに、

あっさり諦める根性無しにはなりたくない!

四人で行くの、この四人で!それが最優先だから!

この言葉を受けた時の日向さんの心情はどんなものだったんでしょう?

おそらく第3話の最後、ホテルまで迎えに来てくれた3人を見た時の、結月さんの気持ちと近いんだと思います。

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「ここまで自分の心に踏み込んでくれる人がいるなんて信じられない」

という驚きと感動です。

仲間を信頼できたことで、日向さんの心は少しだけ軽くなりました。

しかし、根本的に問題が解決したわけではありません。

そして第11話。

日向さんの元・陸上部の同級生が、テレビ電話で話しかけてきました。

ひどい裏切りで日向さんを傷つけたのに、今さらヨリを戻そうとするのです。

激しい嫌悪感と怒りで大暴れする日向さん。

「私がさ、なんで南極に来たと思う。何にもないからだ。

何のしがらみもない人と

何にもないところに行きたかったんだ。

見ろよ、すごいじゃん。

氷河、地層、雪解け水。

どれも見たことない色、見たことない形、

私達が知ってるものはなにもない。

今までとぜんぜん違う別の世界がここにあるんだぞ。

それを楽しむために来たんだ!」

日向さんが “今までとぜんぜん違う別の世界” に来たのは、

怖がりで未熟な自分から「逃げるため」

つまり「南極」から目を逸らすために南極に来た。

自分の内面や過去としっかり向き合い、新しい一歩を踏み出すため、ではなかったんですね。

一歩を踏み出すため南極を目指したキマリさんと、動機が真逆なのが興味深いと思いませんか?

「みんなで心を一つにして事態に取り組む」

という決まり切ったステレオタイプには依らない。

そう単純には物語を転がさない。

だからこそ今作は幾層にも切り口が持てて、奥が深いのです。

そして、そんな日向さんが抱える「南極」の氷をすっかり溶かした人物。

それはやはり、しらせさんでした。

日向さんを裏切った少女たちに対し、彼女は画面越しに啖呵を切ります。

「あなたたちは日向が学校やめて辛くて苦しくて、

あなたたちのこと恨んでると思っていたかもしれない。

毎日部活の事思い出して泣いてると思っていたかもしれない。

けど、けど……」

「日向はもうとっくに前を向いて、もうとっくに歩き出しているから!

私達と一緒に踏み出しているから!」

「私は日向と違って性格悪いからはっきり言う。

あなた達はそのままモヤモヤした気持ちを引きずって生きていきなよ!

人を傷つけて苦しめたんだよ?

そのくらい抱えて生きていきなよ!それが人を傷つけた代償だよ!

私の友達を傷つけた代償だよ!」

一般に「人」ではなく、

「日向」だからこその怒り!!

「私の友達を傷つける奴は私の敵だ!」

そう言い切るしらせさん、素敵じゃありませんか!

日向さんに自分を重ねていたのも手伝って、こみ上げてくるものがありました。

本当の仲間ができ、

過去のしがらみからも解放され、

日向さんの「南極」到達が果たされた瞬間。

私にとって正真正銘、今作のベストシーンです。

“周りの目”なるものを恐れ、私たちはいかに多くの時間を無駄にしてきたことでしょう。

「100人から好かれようと八方美人になる必要はない」

「どうでもいい99人から嫌われたっていいじゃんか」

「互いに尊敬し合えるたった1人との関係を、徹底的に大事にしよう」

そう割り切れば、人間関係でクヨクヨする事はなくなります。

しらせさんの生き様は、これからの世の中にもっと必要となってくるはずです。

このシーンにおけるしらせさんの役割については、考察(4)でさらに深堀りしましたので、ぜひご参照ください!↓

さらに。

同シーンで暗示される消費者に対する製作陣のメッセージがヒリヒリさせます。

“画 面 の む こ う” 

にいる人物たちに向かって、

「お前らはずっとそこでモヤモヤしてろ!」

ですからね。

「このアニメを見ただけで満足して、

何も行動を起こさないのなら。

画面の前の君たちは、

日向さんを消費した陸上部員と同じだ」

作り手はそれを伝えたかったのではないでしょうか?

受け手に対する容赦のない叱責、まるでダニー・ボイルの『T2』じゃありませんか。

当たりさわりのない綺麗な青春群像では決してなく、

受け手の耳が痛いこともハッキリと伝える。

しらせさんのように。

『よりもい』が特別な作品である理由はそこにあります。

結月さんの「南極」

結月さんは小さな頃から、子役として芸能活動を続けています。

忙しさで学校で友達を作る事もままならなかった彼女の「南極」は、そもそも人間関係の結び方が “分からない” こと。

他人と関係を結ぶのが “怖い” 日向さんとは、また別の哀しみがありますね。

そんな彼女も仲間とコミュニケーションを重ね、ぎこちないながら徐々に社会人として成長していく。

不器用ながらも片意地を張らず、他人と向き合おうと奮闘する。

この健気さ、見習いたいです。

しかし正直まだ「結月さんを深く知れたな」という実感を持ててないので、これだけにとどめます。

しらせさんの「南極」

「越冬隊として南極に向かったお母さんが、3年前に消息を絶った」

それ以来モヤモヤとした気分が晴れないしらせさん。

彼女はそれを「夢から醒めない状態」と言います。

そんなしらせさんにとって、

南極に到達すること自体は意外にも大きな課題ではありませんでした。

第12話でしらせさんは、自分が抱える本当の「南極」に直面します。

憧れの南極に着いたのに、心は動かないままだ。

いったい何が足りないんだろう?

そのあと仲間の頑張りのおかげで、お母さんが遺したPCが発見されます。

おそるおそるメールボックスを確認するしらせさん。

そこには、しらせさんがお母さんに送った夥しい数のメールが。

50通、、100通、、1000通、、、

決して開かれる事のない未読メールの洪水が、事実を残酷に突き付けます。

「お母さんは死んだんだ。もう二度と会えないんだ」

「だけど、私はその悲しみを引き受けよう」

「私は未来に向かって踏み出すんだ」

その決意を固める事が、彼女にとって本当の「南極」到達でした。

夢から醒めた瞬間、ぐしゃぐしゃに泣き崩れるしらせさん。

それでも。

お母さん=過去を失った悲しみに、

こんなに共感してくれて、

こんなに泣いてくれる友達=現在がいる。

3人の仲間が大写しになるのは、しらせさんがようやく現実に向き合えた証です。

しらせさんとお母さんの関係が『ドラえもん』『機動戦士ガンダム』『ファイトクラブ』である事を、以下の記事で書いています。

こちらもご参考になれば幸いです。

受け手それぞれの「南極」

しらせさんにとってのお母さんは、

あなたにとっての「南極」は何ですか?

例えばこんな人、あなたの周りにも一人はいるかも知れません。

ひさびさに会っても、出てくる話題は思い出話ばかり。

「あの頃はよかったなあ」

昔を懐かしがるか、自分の現状がいかにつまらないかをグチるだけの人。

そうとも。過去は美しい。

そして過去の蓄積のおかげで現在がある。

過去に敬意を払わない奴はろくでなしだ。

それでも。

過去にすがるばかりでは人は前には進めない。

過去とは何か?言い換えれば、

「そこにないのに、心の中にだけあるもの」

つまりは幻想です。

しらせさんと同じく、不慮の事故で家族を失ったトラウマに縛られる少年が、勇気を出して過去の亡霊を振り払う『IT』

また同じく、幼少時代に親友を失った旧友たちが、過去の亡霊に縛られる自分を変えていく『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』

無意味に死んでいった過去の無数の人々のことを、自分だけは忘れずに生き続ける運命を背負った人物を描いた『スローターハウス5』『あなたの人生の物語』そして『ベルリン天使の詩』

あのアニメも、あの映画も、あの小説も、あの音楽も、すべては夢で幻想です。

そして『よりもい』の主人公たち。

彼女たちは過去を捨て去るのではなく、

過去と和解し手を取り合い、

勇気を持って現実に立ち向かい始めました。

私たちも現実社会を生きる以上、

幻想にすがるだけではやっていけません。

過去と幻想を味方にして、

よりよい生を送らねば。

『よりもい』の感動を味方にして、

自分の「南極」に精一杯とり組みましょう!

第2回は裏主人公めぐっちゃんが担う「幽霊」という役割についての考察です。

めぐっちゃんの心理を深く知ることで、あなたの人間関係ストレスが軽くなるかも!?

『宇宙よりも遠い場所』記事一覧

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4話/5話/6話 を収録

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